無添加だしと白髪染めヘナの共通点

今から１５年程前のことです。私はオーガニック食品や無添加の自然派化粧品を扱う卸会社に勤めていました。当時の会社の方針で化学調味料を一切使わない無添加だしをつくることが決まりました。更に「マクロビオティック(動物性使わない)オーガニックの野菜・天然の海産物だけを使い、化学物質を使わないだしを作ろう」ということになりました。私たちもいろいろ勉強し、知恵を絞って「これならいけるぞ！」というものを工場にお願いして、試作品を作ってもらうことになりました。

野菜と天然の昆布の旨みだけで作る「だし」・・・もちろん原料の野菜は有機栽培のものを使い、調味料も伝統製法で作られた醤油！名実ともに「本格だし」もう期待でいっぱい。どんなに美味しいだしになるんだろう・・・わくわくでした！出来てきた試作品を前に、全員、前のめり状態でした。さて、実食！！・・・しばし・・・唖然・・・出来てきた「だし」は、薄味も薄味。ぼやけていて、どこからみても「美味しい」とはほど遠いものでした。

ご存知ですか？秘密の調味料

確かに自然物だけで作っただしをすぐに食すれば美味しいのかも知れません。
しかしながら、それをレトルトにして更に何日も経過してしまったダシですので、美味しいはずがありません。こんな状況で普通の食品メーカーであれば、グルタミン酸ソーダなどの化学調味料の「旨み」を加えて、あっというまに美味しい「だし」を作ってしまうのですが、「無添加」「安全」をうたう会社としては、それは許されません。

いやあ、こまったなぁ～、すると、あるメーカーの社長さんが、ある事をこっそり教えてくれました。「実は・・・化学調味料と同じような旨みがあって、でも、化学物質として表記しなくていいものがあるんですよ」そんなものがあるのか！？と驚かれますよね。みなさま、台所にある調味料のビンや箱の裏側を、ちょっと見てみてください。「酵母エキス」とか「たんぱく加水分解質」という文字がありませんか？

これらは日本の法的な食品分類としては化学調味料ではありません。これらの「旨み」を添加していても、表記は「無添加」「化学物質不使用」としていいわけです。これが、秘密の調味料の正体なんです。一方、培養方法が自然物とは言い難いという見解をされる人も少なくありません。実際にそのような立場から、元祖オーガニック宅配の会社さんでは、加工食品の中にこれらの調味料を使用しているものは取り扱わない方針をうちだしているようです。これらを使った「化学調味料もどきの無添加調味料」は自然食品業界でも広く普及しています。実際、ぼやけた味の試作品に酵母エキスを少量加えたら・・・あっというまに旨みたっぷりの美味しいだしになりました。このことを教えてくれたのが、かつて食品添加物の会社でトップセールスマンだった安部　司さんです。少し前に話題になった本で「食品の裏側」という本がありベストセラーになりました。

安部さんが添加物の会社にお勤めになっていた時のことです。自分の娘の誕生日のごちそうに、ある大手メーカーのミートボールが出ました。それを見た阿部さんは、思わず「食べるな！」と娘を止めてお皿を下げてしまったそうです。その食品こそ、彼自身がアドバイスし売り込んだ化学調味料がたっぷり入った「美味しい」ハンバーグでした。自分が作り出した化学調味料まみれの食品を、自分の娘には食べさせられない・・・この矛盾と罪の意識から会社を退職し、食品添加物についての本を書いたわけです。そんな無添加ブームもあり「無添加調味料」「無添加だし」という商品が多くみかけるようになりました。

「天然昆布の白髪染め」と「無添加だし」

最近、よく受ける質問に「天然昆布を使った白髪染めは安全ですか？」というものがあります。天然昆布や植物を使っているというと、さも安全そうに聞こえますし、昆布や植物で白髪が染まっているように聞こえます。が、実は化学物質が含まれていて、白髪が染まっているのは化学物質の力が大なのです。

もちろん、安全の基準は人によって違いますから、どうこうは言えません。
でも、このような白髪染めは、あの「無添加のだし～」に似ているようにおもえてなりません。

私どもでは、広く普及している化学染料が入ったケミカルヘナは取扱いはありません。正直に言えば、ケミカルヘナは価格も安く色も好きな色にきれいに入ります。お客様にも喜ばれますし、メーカーも美容院も感謝される上に儲かる・・・すべて円く収まります。でも、私たちは、１０年後・２０年後の頭皮や髪のことを考えますと一時的に便利に使えるケミカルヘナは使用できません。

長くオーガニック業界でお世話になっていて感じることはこの矛盾です。古来より伝統製法で作られたお醤油やお味噌より、一見よさげなインスタント食品やお菓子の方が断然売上もあり、利益もでるのです。

Aランクシャーディーヘナは大手さんのように広告宣伝を使うことはできません。そのお金があれば中身をよりよいものにしたいとおもってしまうからです。CMで有名な女優さんや著名人の方を起用することはできませんが、そのような方たちがマネージャーさんや近親者の方にお願いして、こっそり使っていただいています。何よりもお客様からお客様への口コミが一番の原動力です。
そんなことを考えながら本日もヘナ染め講座をやっております。